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大阪高等裁判所 平成11年(ネ)160号・平11年(ネ)3493号 判決

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  本件附帯控訴に基づき,原判決主文第二項及び第三項を次のとおり変更する。

1  控訴人は,被控訴人に対し,平成9年3月25日限り30万5084円,平成9年4月から平成10年3月まで毎月25日限り31万7972円,平成10年4月から同年5月まで毎月25日限り32万4200円,同年6月から平成11年3月まで毎月25日限り32万3700円,平成11年4月から控訴人が被控訴人を控訴人の職場に復帰させるまで,毎月25日限り1か月33万5128円の割合による金員をそれぞれ支払え。

2  控訴人は,被控訴人に対し,平成9年3月20日限り13万5905円,同年6月末日限り57万0460円,同年12月10日限り70万0110円,平成10年3月20日限り14万2615円,同年6月末日限り58万3000円,同年12月10日限り71万5500円,平成11年3月20日限り14万5750円,同年6月から控訴人が被控訴人を控訴人の職場に復帰させるまで,毎年6月末日限り60万6540円,同年12月から控訴人が被控訴人を控訴人の職場に復帰させるまで,毎年12月10日限り74万4390円,平成12年3月から控訴人が被控訴人を控訴人の職場に復帰させるまで,毎年3月20日限り15万1635円の各割合による金員をそれぞれ支払え。

三  控訴人と被控訴人との間の訴訟費用は,第一,二審とも控訴人の負担とする。

四  この判決は,第二項に限り,仮に執行することができる。

事実及び理由

第一当事者の求めた裁判

一  控訴の趣旨

1  原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。

2  被控訴人の控訴人に対する請求をいずれも棄却する。

3  訴訟費用は第一,二審とも被控訴人の負担とする。

二  控訴の趣旨に対する答弁

1  主文第一項と同旨

2  控訴費用は控訴人の負担とする。

三  附帯控訴の趣旨(当審における追加請求の趣旨を含む。)

主文第二項と同旨

四  附帯控訴の趣旨に対する答弁

1  本件附帯控訴(当審における追加請求を含む。)を棄却する。

2  附帯控訴費用は被控訴人の負担とする。

第二事案の概要

一  事案の概要は,次のとおり原判決を補正し,次項のとおり,当審における新たな争点及びこれに関する当事者の主張並びに従来の争点に関する控訴人の補充主張を付加するほかは,原判決「事実及び理由」の「第二 事案の概要」欄(3頁末行から14頁10行目まで)記載のとおりであるから,これを引用する(なお,文中「原告」とあるを「被控訴人」と,「被告学校法人聖パウロ学園」及び「被告学園」とあるを「控訴人」と,「被告山田右」及び「被告山田」とあるを「原審相被告山田」とそれぞれ読み替える。)。

1  4頁初行の「平成9年2月27日付けで」の次に「平成5年6月8日改正施行後の」を付加し,5行目の「本件第2回口頭弁論期日」を「平成10年6月1日の原審第2回口頭弁論期日」と訂正し,6行目の「平成10年3月31日付けで,」の次に「平成10年2月9日改正施行後の」を付加し,8行目の「しないければ」を「しなければ」と,同行の「前号」を「前各号」と各訂正し,9行目の「受けた」の次に「(以上の事実は,後記二のとおり,当事者間に争いのない事実及び同項掲記の証拠により容易に認定できる事実である。なお,以下,右<1>の懲戒解雇及び右<2>の普通解雇の意思表示に関して引用する就業規則は,平成5年6月8日改正施行後の就業規則を指し,右<3>の普通解雇の意思表示に関して引用する就業規則は,平成10年2月9日改正施行後の就業規則を指すが,特に断らない限り,区別することなく,就業規則という。)」を付加する。

2  5頁4行目の次に改行して次のとおり付加する。

「 原判決は,右請求一を認容し,右請求二,三を棄却したところ,控訴人は,右認容部分に対し控訴し,被控訴人は,右請求一のうち給与及び一時金(賞与)の支払いを求める部分についてのみ附帯控訴し,追加請求をしたので,当審における審判の対象は,右請求一についてであるから,その限度で判断する。」

3  8頁4行目の「被告学園は,」の次に「平成10年6月1日の原審第2回口頭弁論期日において陳述された」を付加し,5行目から6行目にかけての「通常解雇を」を「通常解雇の」と訂正する。

4  9頁6行目の「被告学園は,被告学園は,」を「控訴人は,」と訂正し,9行目の「存在しないとしている」の次に「(原審相被告山田,弁論の全趣旨)」を付加し,11行目から10頁3行目までを次のとおり訂正する。

「(一) 被控訴人が,解雇されなければ,控訴人から受給できた賃金及び一時金(賞与)として,争いのない額は,次のとおりである。

(1) 賃金

ア 平成9年3月分

<1>本俸24万7100円,<2>教特手当8600円,<3>住居手当2万9500円

イ 平成9年4月から平成10年3月まで

<1>本俸25万9300円,<2>教特手当8800円,<3>住居手当2万9500円

ウ 平成10年4月から同年5月まで

<1>本俸26万5000円,<2>教特手当9100円,<3>住居手当2万9500円

エ 平成10年6月から平成11年3月まで

<1>本俸26万5000円,<2>教特手当9100円,<3>住居手当2万9000円

オ 平成11年4月から現在まで

<1>本俸27万5700円,<2>教特手当9400円,<3>住居手当2万9000円,<4>研修手当1万円(ただし,争いがないのは,平成11年6月11日以降分)

(2) 一時金(賞与)

争いがないのは,期末手当分であり,その支給率は,3月分の賞与が0.385,6月分の賞与が1.54,12月分の賞与が1.89である。

(二) 賃金の支給日は,毎月25日であり,一時金(賞与)の支給日は,6月は29日,12月は8日,3月は15日である(<証拠略>)。」

5  10頁10行目の「午前8時から,午後7時まで」を「少なくとも午前8時ころから午後8時ころまで」と訂正する。

6  13頁7行目の「雇い止め」を「雇止」と訂正する。

二  当審における新たな争点及びこれに関する当事者の主張並びに従来の争点に関する控訴人の補充主張

1  被控訴人が,控訴人を解雇されなければ,控訴人から受給できた賃金及び一時金(賞与)の額(当審における新たな争点)。

(被控訴人の主張)

前記当事者間に争いのない事実及び証拠により容易に認定できる事実7における争いのない額以外に,被控訴人が受給できる賃金及び一時金(賞与)は,次のとおりである。

(一) 賃金

(1) 平成9年3月分

<1>調整手当(旧教職調整,以下同じ)9884円,<2>研修手当(旧調整手当,以下同じ)1万円

(2) 平成9年4月から平成10年3月まで

<1>調整手当1万0372円,<2>研修手当1万円

(3) 平成10年4月から同年5月まで

<1>調整手当1万0600円,<2>研修手当1万円

(4) 平成10年6月から平成11年3月まで

<1>調整手当1万0600円,<2>研修手当1万円

(5) 平成11年4月から現在まで

<1>調整手当1万1028円,<2>研修手当1万円(争いがあるのは,平成11年4月から同年6月10日までの分)

(二) 一時金(賞与)

被控訴人は,争いのない期末手当分以外に,勤勉手当分についても受給できるところ,その支給率は,3月分の賞与が0.165,6月分の賞与が0.66,12月分の賞与が0.81である。期末手当分と勤勉手当分を合計した金額は,次のとおりである。

(1) 平成9年3月分 13万5905円(本俸24万7100円×0.55=13万5905円)

(2) 平成9年6月分 57万0460円(本俸25万9300円×2.2=57万0460円)

(3) 平成9年12月分 70万0110円(本俸25万9300円×2.7=70万0110円)

(4) 平成10年3月分 14万2615円(本俸25万9300円×0.55=14万2615円)

(5) 平成10年6月分 58万3000円(本俸26万5000円×2.2=58万3000円)

(6) 平成10年12月分 71万5500円(本俸26万5000円×2.7=71万5500円)

(7) 平成11年3月分 14万5750円(本俸26万5000円×0.55=14万5750円)

(8) 平成11年6月分 60万6540円(本俸27万5700円×2.2=60万6540円)

(9) 平成12年3月分 15万1635円(本俸27万5700円×0.55=15万1635円(ママ)

(控訴人の主張)

控訴人の賃金規定によれば,被控訴人主張の調整手当は,みなし残業として支給されるものであり,実際に勤務することにより支給されるべきものであり,研修手当も同様であるから,被控訴人は,支給の対象外である。

また,賞与の支給割合は,期末手当と勤勉手当に分けられており,被控訴人が実際に勤務していない以上,勤勉手当の支給の対象外である。

2  従来の争点に関する控訴人の補充主張

(一) 争点1(兼業禁止を理由とする解雇の効力)について

一般に,労働者は,特定の使用者と,約定した労働時間に労務を提供し,それに相応する対価を取得するという労働契約を締結することにより,その時間内は,その使用者のための業務の遂行に専念すべきであるから,その意味で,時間的に抵触するすべての他の活動を放棄することになる。したがって,被控訴人のようにフルタイム(労基法所定の労働時間限界まで)で労働することを控訴人と約定した場合には,それとは別に,他の使用者のために労働することを約定し,あるいは労働者が自営で就業すること自体,控訴人に対する契約違反になる。しかも,被控訴人の「クレーC」における稼働時間帯は,まさに控訴人の授業時間帯であり,被控訴人の労働義務と抵触することは,明らかである。そして,右義務違反の程度は,極めて重大であり,このような義務違反が経営秩序を乱すことは当然である。

被控訴人は,控訴人が被控訴人の就労を拒否しているから,業務の併存状態がなく,兼業禁止を求める前提を欠くと主張する。しかし,被控訴人は,控訴人に雇用されている教員であることを主張し,しかもその申請に基づく仮処分命令により,控訴人の教員としての地位を保全され,その対価を得ているのであるから,控訴人の請求に応じ,いつでも就労できるような態勢を維持している義務がある。控訴人が被控訴人を就労させなかったからといって,被控訴人はこの義務を免れるものではない。しかるに,被控訴人は,「クレーC」を営利事業として継続的に経営していたのであるから,控訴人の要求があれば労務を提供しうる状態にあったということはできない。そうしてみれば,被控訴人は,適式に控訴人に対し労務を提供したとはいえないから,控訴人が被控訴人を問責しうることは当然である。

また,被控訴人は,自分は控訴人の教員であると主張し,仮にであるとはいえ,その主張を認めてもらいながら,それと相容れない行動をとっているのであるから,これを是認することは,クリーン・ハンドの原則に反するというべきである。

(二) 争点2(整理解雇の効力)について

原判決は,いわゆる人員整理についてしばしば用いられている判断基準を本件解雇に当てはめようとし,解雇の必要性のほか,解雇回避の努力とか手続の相当性等まで付け加えて,本件解雇は権利の濫用に当たるとしている。

しかし,人員整理として行う解雇について特別な取扱をするという考え方は,それが経営全体の集団的現象として評価されるという発想に基づくものである。すなわち,企業の存続を図るために人員整理を必要とする事態が発生した場合には,何人かの余剰人員を解雇せざるを得ず,解雇された者はこれによる不利益を負担する。ところで,企業活動は,経営主体の統括・管理のもとで,労働者の協力によって展開されるから,人員整理を必要とする事態から生じる不利益ないし損失は,労使間においてのみならず,労働者相互間において配分・分担することが合理的と考えられる。そこで,解雇という負担をできるだけ少なくするためにどうするかとか,不利益の配分については労使全体の考えを反映させるようにするという観点から,解雇回避の努力とか手続の相当性等が間(ママ)題となる。したがって,単純に被控訴人だけの解雇の相当性を検証する本件について,右のような問題を論じるのは見当違いである。したがって,本件で問題となるのは,宗教科を廃止したことが解雇の合理的な理由となるかということである。

控訴人は,カトリック京都司教区の田中教区長から,宗教科を廃止するよう迫られ,被控訴人がこれに同調し,又はこれを利用する虞れがあったため,窮地に追い込まれる危険があることが予測された。そこで,控訴人は,この危険を避けるためには,再三指摘されている宗教科(それは,一定のカリキュラムに従い,計画的,系統的に講義をするという方法で行われ,控訴人では必須科目とされていた。)を廃止するにしくはないと判断し,その措置を採ったのであって,その判断は,控訴人の裁量の範囲内にあるというべきである。

そして,控訴人は,被控訴人を宗教科担当の専任講師として採用したものであるから,被控訴人に宗教科以外の教科を担当させることはできず,強いて考えるとすれば,宗教科廃止後に行っている宗教教育を担当させるかどうかということである。しかし,控訴人が現在行っている宗教教育というのは,1学年(中学校・高等学校各3学年)ごとに,1週間に1時間行うスクール・アワーだけである(祈念礼拝というのは,ミサに代わる行事であって,宗教教育ではない)。それは,特定の教員により,一定のカリキュラムに従って,計画的,系統的に講義をする(したがって,それは知的教育が主体となる)というものではなく,山田理事長,学校長,副校長などカトリック・キリスト教信者有志の代表者といえる者が交代して,その豊富な人生経験に基づき,キリスト教精神を基調とした実践的内容の講話をするものである。この場合,仮に,同一の者がスクール・アワーを担当するとしても,1週間に6時間に過ぎず,しかも,それは必修科目ではないから,試験,採点等を必要としない。ところで,宗教科の専任講師が担当する業務の量は,1週間当り平均30時間の授業と,これに付随する業務を根幹として決められるから,前述のような方法でスクール・アワーによる宗教教育をするならば,そのために,わざわざ専任講師を1人雇用しておく必要はない。したがって,控訴人が宗教科を廃止した結果,被控訴人を解雇したことには,合理的な理由があるといわなければならない。

第三証拠

証拠関係は,原審及び当審記録中の証拠関係目録記載のとおりであるから,これを引用する。

第四当裁判所の判断

一  当裁判所も,被控訴人の雇用契約上の地位の確認を求める訴え並びに職場復帰までの賃金及び一時金(賞与)の支払いを求める請求(当審における追加請求を含む。)は,理由があると判断するものである。その理由は,次のとおり付加,訂正,削除するほかは,原判決「事実及び理由」の「第四 争点に対する判断」欄(16頁4行目から30頁10行目まで)記載のとおりであるから,これを引用する(ただし,文中「原告」とあるを「被控訴人」と,「被告学園」とあるを「控訴人」と,「被告山田」とあるを「原審相被告山田」とそれぞれ読み替える。)。

1  16頁6行目の「(証拠略)」の次に「(証拠略)」を付加し,7行目の「(証拠略)」を「(証拠略)」と訂正する。

2  19頁4行目から21頁7行目までを次のとおり訂正する。

「 右認定の事実によれば,被控訴人は,控訴人の責に帰すべき事由により解雇されて就労を拒否され,就労できなかったのであるから,被控訴人の控訴人に対する労務給付義務は,控訴人の責に帰すべき事由により履行不能となり,消滅するというべきである。

ところで,控訴人主張の就業規則33条3号,34条4号,35条1項6号,36条7号,17条9号,12号の兼業禁止等の規定の趣旨は,被控訴人の労務給付義務があることを前提として,学校法人としての控訴人の秩序を維持し,又は,従業員の労務の提供が不能若しくは著しく困難になることを防止することにあると解される。そうすると,前述したとおり,被控訴人の控訴人に対する労務給付義務は消滅しているのであるから,被控訴人が喫茶店営業をしたとしても,右兼業禁止等を定めた就業規則に違反するとはいえないというべきである。実際上も,このように解さなければ,使用者の責に帰すべき事由により解雇された労働者は,収入を得る途が閉ざされることになり,不当であることは明らかである(解雇が無効であることが確定すれば,遡及賃金額から中間収入として控除されることになる。)。

これに対し,控訴人は,被控訴人は,その申請に基づく仮処分命令により,教員としての地位を保全され,その対価を得ているのであるから,控訴人の請求に応じ,いつでも就労できるような態勢を維持している義務があると主張する。しかしながら,仮処分の執行により仮の履行状態が作り出されたとしても,それは,あくまで暫定的仮定的法律状態であって,かかる事実は,本案訴訟において斟酌されるべき筋合いのものではないから(最高裁昭和35年2月4日第一小法廷判決,民集14巻1号56頁参照),控訴人の右主張は,失当である。

また,控訴人は,被控訴人は,自分は控訴人の教員であると主張し,仮にであるとはいえ,その主張を認めてもらいながら,それと相容れない行動をとっているのであるから,これを是認することは,クリーン・ハンドの原則に反すると主張するが,前述したとおりの理由で,右主張も失当である。

したがって,被控訴人の喫茶店営業は,控訴人主張の就業規則に違反しないというべきであり,前記争いのない事実等及び前記1で認定した事実を併せ考慮すると,この点を理由とする懲戒解雇及び普通解雇の意思表示は,解雇事由がないか若しくは解雇権の濫用により無効である。」

3  21頁11行目の「(証拠略中の一部証拠)」を削除し,同行の「被告山田本人尋問の結果」の次に「並びに弁論の全趣旨」を付加する。

4  25頁5行目の「右の」を削除する。

5  27頁7行目の次に改行して次のとおり付加する。

「 控訴人は,本件で問題となるのは,控訴人が宗教科を廃止したことが解雇の合理的理由になるかどうかであり,原判決のように整理解雇の判断基準を本件に持ち込むことは,相当でないと主張する。

しかしながら,宗教科の廃止を理由とする解雇は,解雇原因が労働者である被控訴人にない点において,整理解雇と共通しており,控訴人も整理解雇の場合に適用される就業規則16条4号,12号を主張していることに照らせば,原判決判示の事情を総合考慮して,解雇権の濫用に当たるかどうかを判断するのが相当である(逆にいえば,これらの事情を考慮したうえでないと,解雇権の濫用に当たらないとはいえない。)から,控訴人の右主張は,採用できない。

控訴人は,その他にも縷々主張するが,右の認定判断を左右するものではない。」

6  27頁10行目ないし末行を次のとおり訂正する。

「三 当審における新たな争点(未払賃金等)について

1 以上のとおり,被控訴人は,控訴人との間で,雇用契約上の地位にあることが認められるから,控訴人は,被控訴人に対し,平成9年3月1日以降の賃金及び各期の一時金(賞与)を支払う義務がある。

なお,控訴人は,被控訴人は,仮処分命令により,教員としての地位を保全され,その対価を得ているのであるから,控訴人から就労を拒否された場合であっても,控訴人の請求に応じ,いつでも就労できるような態勢をとっている義務があるところ,被控訴人が適式に控訴人に対し労務を提供したとはいえないから,控訴人に対する賃金債権を取得しないと主張する。しかしながら,被控訴人は,控訴人から解雇され,就労を拒否されたものである(前認定)から,履行の提供とともに使用者の責に帰すべき事由による履行不能となり,民法536条2項の適用があるものと解される(大審院大正4年7月31日判決,民録21輯1356頁参照)から(なお,仮処分の執行により作り出された仮の履行状態を本案訴訟において斟酌すべきでないことは,前述したとおりである。),控訴人の右主張は,失当である。

2 控訴人は,控訴人の賃金規定によれば,調整手当及び研修手当は,実際に勤務することにより支給されるべきものであるから,被控訴人には,支給されないと主張する。

しかしながら,控訴人の職員給与規程(<証拠略>),給与規程細則(<証拠略>)によれば,右各手当が実際に勤務することにより支給されるべき性質の手当であることを窺わせる規定ではなく,労働の対価としての賃金に含まれるものと認められるから,控訴人の右主張は,理由がない。そして,右職員給与規程(<証拠略>),給与規程細則(<証拠略>)によれば,調整手当は,本俸に4パーセントを乗じた額であり,研修手当は,教育職員の場合,1万円であると認められるから,平成9年3月分以降の分について,被控訴人主張のとおりの金額が認められる。

3 控訴人は,賞与の支給割合は,期末手当と勤勉手当に分けられており,被控訴人が実際に勤務していない以上,勤勉手当の支給の対象外であると主張する。

しかしながら,右職員給与規程(<証拠略>),給与規程細則(<証拠略>)によれば,期末手当及び勤勉手当は,基準日に在職し,休職等なく勤務する専任職員ないし常勤職員について支給すると規定されており,支給対象期間内に提供した労務に対する賃金としての性格をもつものと認められるから,控訴人の右主張も採用できない。そして,右職員給与規程(<証拠略>),給与規程細則(<証拠略>)及び弁論の全趣旨によれば,控訴人においては,少なくとも平成4年4月1日以降,3月分,6月分,12月分の期末手当及び勤勉手当につき,本俸,教特手当,調整手当等に,それぞれ被控訴人主張の支給率を乗じて算出した額を支給してきたものと認められる。したがって,少なくとも被控訴人主張のとおりの金額が認められる。

4 なお,(証拠略)によれば,控訴人が,被控訴人に対し,平成11年6月8日付けで就労命令を出し,同月11日付けで宗教科専任講師を命ずるとの辞令を出したことにより,被控訴人は,控訴人に出勤していることが認められるが,右就労命令書等によれば,控訴人は,原判決の定めた仮の地位に基づいて右就労命令等を発出しているというのであり,現に控訴して争っているのであるから,被控訴人の職場復帰を全面的に認めたわけではないから,被控訴人が職場復帰までの賃金及び賞与の支払を求める利益はあるというべきである。」

7 28頁初行の「三」を「四」と訂正する。

8 29頁2行目の「(証拠略)」を「(証拠略)」と訂正し,6行目の「(証拠略)」の次に「(証拠略)」を,8行目の「(証拠略)」の次に「(証拠略)」を各付加する。

五 結論

以上のとおりであり,控訴人の本件控訴は理由がないからこれを棄却し,被控訴人の附帯控訴に基づき,原判決主文第二項及び第三項を本判決主文第二項のとおり変更することとし,訴訟費用の負担につき民訴法67条,61条を,仮執行宣言につき同法259条を各適用して,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 見満正治 裁判官 角隆博 裁判官高橋文仲は,転補につき,署名捺印することができない。裁判長裁判官 見満正治)

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